様々な育毛成分が配合された育毛サプリは、人気の高い育毛関連商品の一つです。
しかし、サプリメントは薬ではないので、含まれている成分の効果が保証されているわけではありません。
含まれている成分が本当に有効なのか、私たちは良く知っておく必要があるでしょう。
そこで、多くの育毛サプリに含まれている人気の成分について、期待できる効果とその根拠となる資料などについてまとめてみました。
ノコギリヤシ
AGA(男性型脱毛症)を引き起こす要因の一つである5α-リダクターゼという酵素を邪魔します(AGAの原因の詳細はこちら⇒AGA(男性型脱毛症)とは?)。
これは『プロペシア』などのフィナステリド配合育毛剤と同じ効果です。
フィナステリド1mgを2年間毎日飲んだ場合、68%の人に薄毛改善効果があったのに対し、ノコギリヤシ320mgを2年間毎日飲んだ場合、38%の人に薄毛改善効果があったという研究報告があります。※1
※1:Rossi A, Mari E, Scarno M, Garelli V, Maxia C, Scali E, Iorio A, Carlesimo M. “Comparitive effectiveness of finasteride vs Serenoa repens in male androgenetic alopecia: a two-year study.” Int J Immunopathol Pharmacol. 2012 Oct-Dec;25(4):1167-73.
L-リジン(リシン)
L-リジンは必須アミノ酸の一つで、毛髪など体を構成する様々なタンパク質を作るのに役立ちます。
肉・魚・チーズ・大豆などに多く含まれています。
「L-リジンには、毛髪の成長を促進する・成長期の毛髪の割合を高める・抜け毛を減らす・ミノキシジルやフィナステリドなどの育毛剤の効果を高めるなどの作用がある」という研究結果に基づき、イギリスのBio-Scientific社は、L-リジンを脱毛症治療目的で使用することの特許を取っています。
この研究では1日当たり500mg~1500mgのL-リジンを飲んでいますので、1日に摂る量の目安になると思います。
ただ、この量のリジンを追加で食事から摂るとすると、肉や魚料理を一品程度多く食べなければなりません。
食事によってリジンを追加するのは、ちょっと難しそうですね。
イソフラボン
イソフラボンは大豆などに多く含まれるポリフェノールです。
女性ホルモンのエストロゲンに似た構造を持ち、女性の更年期障害を和らげる・悪玉コレステロールを減らすなどの作用があります。
血清中DHT(ジヒドロテストステロン:AGAの原因)濃度が低下したとの研究結果※2がありますが、AGAに効果があったという臨床試験結果はないようです。
今のところ、イソフラボンはAGAに効果がありそうというレベルです。
また、イソフラボンを摂取するために、あえてサプリを利用する必要はないと思います。
次の表を見てください。
(以下のイソフラボン量は全て、イソフラボンが体内に吸収されるときの形であるイソフラボンアグリコンとしての量です。)
これによれば、納豆1パック(約45g)には約33.1mg、豆乳コップ1杯(約200g)には約49.6mg、豆腐1丁(約300g)には約60.9mgのイソフラボンが含まれることになります。
食生活に上乗せして摂取するイソフラボン量の上限値は30mg※3ですから、これらの食品だけで十分に追加摂取できます。
※2:M Tanaka, K Fujimoto, Y Chihara, K Torimoto, T Yoneda, N Tanaka et al. “Isoflavone supplements stimulated the production of serum equal and decreased the serum dihydrotestosterone levels in healthy male volunteers.” Prostate Cancer Prostatic Dis. 2009 12:247-252.
※3:内閣府食品安全委員会 大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A
カプサイシン
唐辛子の辛味成分であるカプサイシンには、血行を促進する働きがあります。
カプサイシンによって頭皮の血流が増えると、髪に十分な栄養が行き渡り、育毛につながると考えられます。
一時、「イソフラボンとカプサイシンを同時に取ることで高い育毛効果が得られる」という臨床試験結果が話題になったのですが、この試験を行った大学教授が多数の論文のデータ改ざんに関わった疑いで、謹慎処分になってしまいました。
そのため、この臨床試験の結果も本当かどうか分かりません。
これ以外でカプサイシンの育毛効果を確かめた臨床試験は行われていないようです。
今のところ、カプサイシンの育毛効果については確かな根拠がないという状況です。
亜鉛
亜鉛は細胞分裂に欠かせない成分であり、皮膚や毛髪を作るためにも必要です。
そのため、亜鉛が極度に不足すると脱毛が起こります。
しかし、亜鉛は肉・卵・海苔など日常的に食べる様々な食品に含まれているので、通常であればそれほど不足することはありません。
実際、厚生労働省の調査によると、成人男性の1日当たり平均亜鉛摂取量は8mgで、これは成人男性の1日当たり亜鉛必要量である8mgを満たしています(下表)。
<成人男性の亜鉛摂取量に関する数値(1日当たり)>
※1:厚生労働省 平成25年国民健康・栄養調査
※2:厚生労働省 日本人の食事摂取基準2015年版
カップラーメンばかり食べるなど極端に偏った食生活をしている場合は亜鉛不足になっている可能性もあるので、亜鉛サプリを利用してみても良いかと思います。
また、培養した皮膚細胞において、亜鉛が5α-リダクターゼ(DHTを産生する酵素)の働きを邪魔したという研究結果※4がありますが、逆に、亜鉛を摂取して血漿中のDHT量が増えたという研究結果※5もあります。
結局のところ、亜鉛がAGAに対して効果があるかどうかは分かっていません。
※4:D Stamatiadis, MARIE‐CLAIRE BULTEAU‐PORTOIS, I Mowszowicz. “Inhibition of 5α-reductase activity in human skin by zinc and azelaic acid”. British Journal of Dermatology. 1988;119(5):627–632
※5:A Netter, R Hartoma, K Nahoul. “Effect of zinc administration on plasma testosterone, dihydrotestosterone, and sperm count.” Arch Androl. 1981 Aug;7(1):69-73.
ミレットエキス
ミレットとは穀物のキビの一種です。
ミレットエキスは、髪を作る材料となるアミノ酸のシスチン・メチオニンを多く含んでいます。
ヨーロッパでは、その育毛効果が古くから知られており、育毛剤として利用されてきました。
また、ミレットエキスによって抗ガン剤による脱毛が軽減されたという研究報告もあります。※6
※6:Gardani G, Cerrone R, Biella C, Galbiati B, Proserpio E, Casiraghi M, Travisi O, Meregalli M, Trabattoni P, Colombo L, Giani L, Messina G, Arnoffi J, Lissoni P. (2007) “A case-control study of Panicum Miliaceum in the treatment of cancer chemotherapy-induced alopecia.” Minerva Med. 2007 Dec;98(6):661-4.
いろいろな育毛サプリの中からどれを選ぶべき?
⇒育毛サプリ選びで注目すべきたった2つのポイント