どーも、こんにちは、
ひぽぽです。
前回、「なぜジェネリック品の育毛剤は、インド製が多いのか?」という話をしました。
簡単におさらいすると、
インドでは『物質特許』(薬の成分そのものの特許)が最近まで認められておらず、そのおかげでジェネリック医薬品の製造が盛んになったんでしたね。
【詳しくはこちら⇒インドは僕たちハゲの味方です!ジェネリック育毛剤にインド製が多いわけ】
先進国のジェネリック医薬品への対抗策
ところが、インドのジェネリック医薬品の輸出が増えるにしたがって、先進国が自国の医薬品メーカーの利益を守るための対策に乗り出しました。
1995年に世界貿易機関(WTO)ができた時、アメリカが主導して「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)」を作ったのです。
その内容は、途上国にも先進国と同レベルの特許制度を求めるものでした。
そして、WTO加盟国のインドも2005年から先進国と同様に『物質特許』を認めなければならなくなりました。
しかし実際は、『物質特許』を取るための条件が厳しかったり、強制実施権※を使ってインドの国内メーカーにジェネリック薬の製造を許したりと、先進国の医薬品メーカーにとって不利な状況は変わりませんでした。
(※強制実施権:特許製品の価格が高く、国民が十分に利用できない場合などに、国は特許を持つ企業に対して他企業の特許使用を許可するよう強制することができる。)
インドの例からも分かるように、途上国の主張も取り入れているTRIPS協定では、知的財産がガチガチに保護されているわけではありません。
そのため十分な効果の得られなかった先進国、特にアメリカは、TRIPS協定よりさらに強力に知的財産を保護するTRIPSプラスを、2国間交渉などによって各国に個別に認めさせていくようになりました。
TRIPSプラスに警鐘を鳴らす国境なき医師団
TRIPSプラスによって知的財産の保護が強化されると、特許による独占状態が延長されることになり、ジェネリック薬が市場に登場するのが遅れることになります。
それは、薬を必要とする途上国の貧しい人たちに、より長期にわたって薬が行き届かなくなることを意味しています。
そのため、国境なき医師団は各国に対し、途上国の人たちの衛生のためにTRIPSプラスを結ばないようにと主張しています。
「企業の権利」か「公共の利益」か
このように、「巨額の投資をして薬を開発したメーカーの利益」と「途上国の人たちの命や健康」の二つが対立し、世界的に大きな問題となっているのです。
新薬の開発には10年以上の年月と数百億円もの巨額の費用が必要であり、その分の利益を得るのは医薬品メーカーとして当然の権利です。
でも、医薬品メーカーが普通の企業のように限界まで利益を追求していいとは思えません。
薬など人の健康や命に深く関わっている物は、一企業の物というより社会みんなの物という性質が強くなります。
ですから、医薬品メーカーは自己の利益の追求はある程度までに抑え、みんなの利益も考える必要があると思います。
「メチャクチャお金もうけたい!」としか考えていない人は、そもそも医療に関する仕事をすべきではないでしょう。
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