どーも、こんにちは、
ひぽぽです。
男性型脱毛症(AGA)の症状は、多くの場合30歳代から目立ってきます。
なので、30歳代で育毛剤の『プロペシア』を使用している人も多いと思います。
また、晩婚化の影響もあり、30歳代は子作りを考えている人がまだまだ多い世代でもあります。
30歳代は『プロペシア』を使用する年代でもあり、子作りをする年代でもあるわけです。
そうなると気になってくるのが、『プロペシア』の子作りへの影響です。
気になるのは、次の二点です。
- 『プロペシア』を飲んでいると、子供ができにくくなるのでは?
- 『プロペシア』を飲んでいると、産まれてくる子供に障害が起こるのでは?
では、これらの疑問について順番に見て行きましょう。
『プロペシア』を飲んでいると、子供ができにくくなるのでは?
『プロペシア』の副作用に性機能障害があることはよく知られているので、「『プロペシア』を飲んでいると、子供ができにくくなるのでは?」と心配になりますよね。
実は性機能障害以外にも、『プロペシア』は精液や精子の質に悪影響を与えたり、精子のDNAにも悪影響を与えたりするのではないかと言われています。
性機能障害・精液や精子の質への影響・精子のDNAへの影響というこれら3つの点について、本当に子どもができにくくなるのか見て行きましょう。
『プロペシア』による性機能障害で子供ができにくくなる!?
まずは『プロペシア』が引き起こす性機能障害についてです。
国内臨床試験では次のような症状が確認されています※1。
- 性欲の減退
- 勃起機能不全
- 射精障害
- 精液量減少
このような性機能障害の発生頻度は3%未満ですし※1、症状が見られたとしても軽度の場合が多いので、通常は子作りへの影響を心配する必要はありません。
ただし、もし子作りの障害になるほどの症状が出た場合には、すぐに『プロペシア』をやめてください。
【『プロペシア』の副作用の詳細はこちら⇒フィナステリド使うべき? 副作用・ポストフィナステリド症候群の問題】
『プロペシア』が精液・精子の質に与える影響で子供ができにくくなる!?
次に、『プロペシア』の有効成分フィナステリドが精液や精子の質に与える悪影響についてです。
関連した研究を2つ見てみましょう。
■ Overstreetらの研究※2
- 181人の健康な男性の集団において、フィナステリドを1日1mg投与した場合の影響を調べた。
- 投薬開始から48週間後、フィナステリド投薬群とプラセボ群の間で、精子濃度・総精子数・精子運動率・正常形態率に差はなかった。
精子濃度:通常1mL当りの精子数で表す。
総精子数:射精1回分の精液に含まれる精子数。
精子運動率:活発に直線的あるいは大きな円を描くように動いている精子の割合。
正常形態率:正常な形をした精子の割合。
■ Samplaskiらの研究※3
- 27人のフィナステリドを使用している不妊症の男性の集団(平均フィナステリド摂取量:約1mg/日・フィナステリド平均使用期間:約5年)において、フィナステリドをやめた後の変化を調べた。
- 平均精子濃度は、32.34M/mLから127.62M/mLに増加した(M/mL=100万/mL)。
- 精子濃度増加率の平均は、11.6倍だった。
- フィナステリド使用中止後、精子運動率や正常形態率に変化はなかった。
健康な男性を対象にしたOverstreetらの研究では、フィナステリドによる精液や精子の質への影響は見られませんでした。
一方、フィナステリドを使用している不妊症の男性を対象にした Samplaskiらの研究では、フィナステリドが精子濃度を低下させていました。
Samplaskiらの研究からは、「フィナステリドは不妊症の原因になる。」、あるいは「不妊症の男性はフィナステリドの悪影響が出やすい。」という二つの可能性が考えられます。
結局、これらの実験から言えることは、健康な人なら精液や精子に『プロペシア』の影響が出ることは通常ないが、一部の人は悪影響が出る可能性があるということです。
『プロペシア』が精子のDNAに与える影響で子供ができにくくなる!?
最後に、フィナステリドが精子のDNAに与える影響についてです。
これに関して、次のような気になる症例が報告されています※4。
- フィナステリドを長年使用している48歳の不妊症男性患者において、フィナステリドをやめた後の精子のDFIの変化を調べた。
- フィナステリドをやめる前の2ヵ月間はDFIは30%だったが、フィナステリドをやめた3ヵ月後には21%に、さらに3ヵ月後には16.5%にまで減少した。
DFI(DNA Fragmentation Index):損傷を受けたDNAを持つ精子の割合。30%を超えると自然妊娠や子宮内人工授精が成功しにくくなるとされている。
この報告は、『プロペシア』が精子のDNAに損傷を与え、妊娠しにくくする場合があることを示しています。
ただし、一症例の報告に過ぎないので、もっと規模の大きい調査がされない限り詳しいことは分かりません。
結局、何が言えるのか?
フィナステリドと不妊の関係についてはまだ研究が少なく、はっきりしたことは分かっていません。
結局、今の段階で言えるのは、
通常は『プロペシア』で子供ができにくくなることはなさそう。
ただし、人によっては子供ができにくくなることもある。
ということです。
『プロペシア』を飲んでいると、産まれてくる子供に障害が起こるのでは?
AGAの原因物質であるDHT(ジヒドロテストステロン)は私たちAGA患者にとっては厄介者ですが、胎児期に陰茎・陰嚢の形成を促すという大事な役割を果たしています。
そのため、DHT量を減少させる作用のあるフィナステリドに胎児がさらされるのを避けなければいけません。
【フィナステリドの作用の詳細はこちら⇒フィナステリドとミノキシジル(AGAに効果のある成分)】
フィナステリドが胎児に悪影響を与えるとなると、「『プロペシア』を使いながら子作りすると、胎児に影響があるのでは?」と心配になってきますよね。
実は、フィナステリドは精液にも移行することが確かめられていて、性交により精液中のフィナステリドが膣を通して女性に吸収される可能性があります。
ですが、精液中のフィナステリド濃度を調べた実験の結果から、
精液中のフィナステリドが胎児に影響を与えることはほぼない
と考えられています。
行われた実験は次のようなものです※1。
男性型脱毛症患者にフィナステリド1mgを1日1回6週間投与し、精液中のフィナステリド濃度を測定した。
その結果、60%(35例中21例)ではフィナステリドは検出されず、検出された場合の最高濃度は1.52ng/mLだった。
この最高濃度を使用し、1日の射精量を5mL、膣からフィナステリドが100%吸収されると仮定して考えると、精液から女性が吸収するフィナステリドの最高量は7.6ng/日、女性の体重を50kgと仮定すると0.15ng/kg/日となった。
この0.15ng/kg/日という量は、妊娠アカゲザルにフィナステリドを静脈注射する実験において胎児への影響が見られなかった120ng/kg/日という量の750分の1以下だった(アカゲザルは子宮内での男児の発生過程やフィナステリドの作用の程度がヒトと似ている)。
どうしても『プロペシア』の子作りへの影響が気になる場合
これまで見てきたように、『プロペシア』による子作りへの悪影響はほとんどなさそうです。
ただし、完全にないとは言い切れません。
『プロペシア』の有効成分フィナステリドの影響についてはまだまだ研究中で、分からないことが多いからです。
すでに不妊症で悩んでいたり、産まれてくる子供への影響がどうしても心配という方は、『プロペシア』をやめるのも良いでしょう。
ただ、産まれてくる子供への影響を考えて『プロペシア』をやめる場合は、注意すべき点があります。
それは、『プロペシア』の影響を受けた精子が体内からなくなるまでに、一定期間が必要だということです。
精子の形成能力に悪影響を与えたり精液中に移行した成分が胎児の奇形を招いたりする危険性が高い薬では、薬をやめた後の避妊期間(薬の影響がなくなるまでの期間)が指定されています。
薬によって異なりますが、避妊期間は3ヵ月や6ヵ月のものが多いです※5。
『プロペシア』も、やめてから6ヵ月経てば、まず問題ありません(ちょっと用心し過ぎな気もしますが……)。
『プロペシア』をやめている間は、代わりに『パントスチン』を使うこともできます。
この育毛剤は、主に女性に起こる男性型脱毛症(FAGA)の治療に用いられています。
『パントスチン』は『プロペシア』と同じくDHT量を減少させる効果を持っていますが、その効果は穏やかです。
さらに、頭皮に塗るタイプなので、『プロペシア』に比べ副作用などの悪影響が出にくくなっています。
『パントスチン』
( ↑ 『パントスチン』は個人輸入代行「オオサカ堂」で購入できます。)
- 製造元:Merz Pharma GmbH & Co.KGaA (ドイツ)
- 100mL(約1ヵ月分)
- 有効成分:アルファトラジオール 0.025%
- 使用方法:1日1回(3mL)頭部の気になる箇所に塗布する。
<参考文献>
※1:プロペシアインタビューフォーム
※2:Overstreet JW, Fuh VL, Gould J, Howards SS, Lieber MM, Hellstrom W, et al. Chronic treatment with finasteride daily does not affect spermatogenesis or semen production in young men. J Urol. 1999 Oct;162(4):1295-300.
※3: Samplaski MK, Lo K, Grober E, Jarvi K. Finasteride use in the male infertility population: effects on semen and hormone parameters. Fertil Steril. 2013 Dec;100(6):1542-6.
※4:Tu HY, Zini A. Finasteride-induced secondary infertility associated with sperm DNA damage. Fertil Steril. 2011 May;95(6):2125.e13-4.
※5:「妊娠・授乳とくすり」対応基本手引き(改訂2 版) 社団法人 愛知県薬剤師会 妊婦・授乳婦医薬品適正使用推進研究班 発行
私がフィナステリドで薄毛を克服するまで
⇒AGA克服体験記
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